本 風に舞いあがるビニールシート 森絵都作 -

森絵都 作 6点の短編がおさめられている。

 

森さんの文章が好きだ。

今回はこの6点の中からほんの題名になっている作品について紹介したい。里佳とエドの夫婦がいる。私たちには耳慣れない国連難民高等弁務官だ。二人は愛し合って職場結婚し、そして別れた。その数か月後エドはアフガンで少女を助けるために亡くなった。

 

その少女と会った記者との会話からエドの最後を知った。

 

普通の家族の幸せを求める女性と、難民たちを少しでも助けるのが義務だと思う男との食い違いから彼らは別れたのだが、いまだに女は男を愛していた。

 

そして男が助けた少女の言葉を聞いて、今まで爆弾も敵の銃撃も受けないところで仕事をしていた女は、男が亡くなったアフガンに生きたいと希求するようになるというお話。

 

エドの意志が彼の死によって彼女に受け継がれたのだ。

 

日本で暮らしている私たちにとって、いつも死と隣り合わせの難民の方々を身近に感じることはできない。

でも今でも世界の各地で内戦や戦争やクーデターなどで、恐ろしい場所で生活している方々が存在しているのは確かだ。

 

スーダンでも内戦で首都ハルツームから避難を余儀なくされた友人のご家族もいらっしゃる。

 

私たちは何もできないと思い、スルーする中、エドのように、難民を作り出す世界の問題を、自分の問題にしてしまう人たちもいる。

 

これは少し前読んだイエスの生涯から感じたことだが、

エス愛の考え方が、エドたちのような方々の中に息づいているのではないだろうか?

 

本人がイエスを信じているといないにかかわらず、アメリカの地に今まで育ってきた文化の中で、彼が育ったことに関係しているのではないだろうか。

 

私のようなものには、今ここ爆弾の飛んでこない日本で、衣食住が何とか足りている今の生活に、ただただかんしゃするばかりである。